厚労省は、今年4月~6月までに長時間労働が疑われる全国2,362事業場に対して労働基準監督署
による監督指導を実施し、先月、その結果を公表しました。
1、監督指導の結果
この監督指導は、長時間労働削減推進本部の指示の下今年1月から労働基準監督署が実施している
もので、1ヶ月当たり100時間を超える残業が行われたとされる事業場や、長時間労働による過労死
などに関する労災請求があったすべての事業場が対象とされた。
監督指導の結果を見てみると、全体の2,362事業場のうち、1,921事業場(81.3%)で労働基準関係
法令違反があり、その主な違反としては以下の内容が指摘されています。
・違法な時間外労働 1,479事業場(62.6%)
・賃金不払残業 252事業場(10.7%)
・過重労働による健康障害防止措置の未実施 406事業場(17.2%)
これを業種毎に見てみると、運輸交通業、接客娯楽業において労働基準関係法令違反の割合が9割
を超えているという結果になりました。
2、指導事例
今回の実施結果の中では10の指導事例が紹介されており、問題点の把握に役立ちます。そこで以下
では製造業の例を一つ取り上げましょう。
「全体の概要」
もっとも長い労働者で、月170時間の違法な時間外労働を行わせ、更に、4ヶ月について月100時間
を超える違法な時間外労働を行わせている。
「監督指導において把握した事実と労働基準監督署の指導」
36協定の特別条項の上限時間である月100時間を超える月170時間の違法な時間外労働を行わせ、また、
4ヶ月について月100時間を超える違法な時間外労働を行わせていた。
「労働基準監督署の対応」
①労働基準法第32条(労働時間)違反を是正勧告
②特別条項付き36協定の適正な運用について指導
③長時間労働の抑制について指導
④過重労働による健康障害防止について専用指導文書により指導
労働基準監督署では上記のように指導した上で、事業場に対して是正・改善状況の確認を行い、是正が
認められない場合は書類送検(実例あり)も視野に入れて対応するなどし、長時間労働の削減に向けた
積極的な対応を行うとしています。
厚労省は今年11月に「過重労働解消キャンペーン」の実施を予定していることから、企業としては、36
協定の尊守など、労働時間の管理をしっかり行っておきたいものです。
N.M
2015.10.21